講義ノート

飲食業のビジネスモデルと財務のポイント

店舗を構える飲食業のビジネスモデルと財務のポイントをまとめました。

飲食業のビジネスモデル

飲食業の商流図

基本的なビジネスモデル

小規模な飲食業のビジネスモデルは、主に以下の要素から成り立っています。

  • 商品の提供: メニューの選定は、ターゲット市場のニーズと好みに合わせて行います。独自性や特色を出すことが重要です。
  • 価格設定: コストプラス価格設定や競合比較価格設定など、市場の状況と自店のコスト構造に基づいた価格設定が求められます。
  • 販売チャネル: 店舗販売のほか、デリバリーやテイクアウト、オンライン注文など、多様な販売チャネルを活用します。

飲食業における財務上のポイント

FL比率の適正化

FL比率(フード&レイバーコスト比率)は、飲食業における最も重要な財務指標の一つです。この比率は、売上に対する食材費(Food Cost)と人件費(Labor Cost)の合計が占める割合を示し、一般的には売上の約60%までが目安とされています。

FL比率の適正化は、コスト管理を通じて利益率を最大化するために不可欠です。

  • 食材費の削減には、仕入れコストの見直しや無駄のない在庫管理が有効です。
  • 人件費の管理には、労働生産性の向上やシフト管理の最適化が鍵となります。

店舗別の採算管理

店舗別の採算管理は、複数の店舗を運営する飲食業において重要な財務戦略です。

各店舗の売上、コスト、利益を個別に分析し、それぞれの店舗が企業全体の収益にどのように貢献しているかを理解することが目的です。

採算管理を行うことで、各店舗のパフォーマンスを正確に把握し、資源の配分や改善策を適切に決定できます。例えば、採算性の低い店舗に対しては、メニューの見直し、プロモーションの強化、コスト削減などの対策を講じることが可能です。

キャッシュフロー管理

キャッシュフロー管理は、飲食業における財務上のもう一つの重要なポイントです。長く「現金商売」として、運転資金の必要のない業種とみられていましたが、クレジットカードやキャッシュレス決済の普及により、売上げの即時入金割合が減少しています。

計画的な投資キャッシュフロー

店舗の改修や、他店舗展開のためには、まとまった設備投資が必要になります。

店舗の改修が必要な理由

  • 顧客の関心の再獲得
    飲食店の内装や外装を更新することで、既存の顧客に新鮮さを提供し、再び店舗に足を運んでもらうきっかけを作ります。また、リニューアルは新規顧客の関心を引き、話題性を生み出すことができます。特にソーシャルメディアが普及している現代では、見た目に魅力的な店舗は写真や動画を通じて簡単に共有され、自然と宣伝効果が生まれます。
  • 競争優位性の確保
    飲食業界は非常に競争が激しく、常に変化しています。定期的なリニューアルにより、店舗は競合他社との差別化を図り、市場内での独自の位置づけを確立することができます。内装や外装のデザインを通じて、ブランドイメージを強化し、顧客に強い印象を残すことが可能です。
  • 顧客体験の向上
    店舗の雰囲気は、顧客が食事を楽しむ上で重要な要素です。リニューアルを行うことで、より快適で魅力的な空間を提供し、顧客体験を向上させることができます。例えば、照明の改善、座席の快適性の向上、装飾の更新などは、顧客が再訪したいと感じる要因になります。
  • 効率性の向上

リニューアルは見た目だけでなく、運営の効率性を向上させる機会でもあります。最新の設備やテクノロジーを導入することで、サービスのスピードを上げたり、省エネルギーでコスト削減につながったりすることがあります。また、キッチンのレイアウトを見直すことで、作業の効率化が図れる場合もあります。

飲食業を成功させるためには

成功するための戦略

  • 差別化: 独自のメニューやサービスを提供し、競合との差別化を図ります。
  • 顧客体験の向上: 顧客の満足度を高めるために、質の高い食事と優れたサービスを提供します。顧客のフィードバックに耳を傾け、改善につなげます。
  • デジタルマーケティング: ソーシャルメディア、オンライン広告、SEO(検索エンジン最適化)を活用して、ターゲット市場にリーチします。
  • コミュニティとの連携: 地域社会との良好な関係を築き、口コミや地域イベントを通じて認知度を高めます。

よくある課題

  • 高い固定費: 家賃、人件費などの固定費が収益に大きな影響を与えます。
  • 競争の激化: 同業他社との競争は非常に激しく、顧客を引きつけるための独自性が求められます。
  • 食材コストの変動: 季節や市場の状況による食材コストの変動は、利益率に直接影響します。
  • 顧客ニーズの変化: 顧客の好みやニーズは常に変化しており、これに迅速に対応する必要があります。

上記課題を解決するための新たな打ち手

  • テクノロジーの活用: 在庫管理や予約システム、POSシステムのデジタル化により、運営の効率化を図ります。
  • フレキシブルなメニュー設計: 季節やトレンドに応じてメニューを柔軟に変更し、顧客の興味を引き続けます。
  • サブスクリプションモデルの導入: 定額で特定のサービスを提供するサブスクリプションモデルを導入し、安定した収入を確保します。
  • パートナーシップの構築: 地元の生産者や他のビジネスとのパートナーシップを構築し、コスト削減や新たな顧客層の獲得を目指します。
  • 持続可能性への取り組み: 環境に配慮した運営や、地元の食材を使用することで、社会的責任を果たし、顧客からの支持を得ます。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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