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講義ノート

PPM分析をマスター!成功事例から学ぶステップ

PPM分析はボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が1970年代初頭に開発したものです。この分析は、特に「BCGマトリクス」としても知られています。

問題児花形
負け犬金のなる木

PPM分析は、製品や事業のポートフォリオを戦略的に評価するツールです。この分析では「市場成長率」と「相対的市場シェア」を軸に、製品や事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つのカテゴリに分類します。これにより、資源の最適な割り当てや事業の方向性を明確にすることができます。

BCGマトリクス(またはBCG成長・シェアマトリクス)開発の背景

1970年代初頭、多くの大企業は多角化戦略を採用しており、多くの事業領域にまたがる製品やサービスを持っていました。これらの企業は、どの事業領域に資源を集中的に投資すべきか、どの事業領域から撤退すべきかという戦略的な意思決定を迫られていました。このような背景の中、BCGは企業がその製品ポートフォリオを評価し、戦略的な意思決定をサポートするためのフレームワークとしてBCGマトリクスを開発しました。

BCGマトリクスの主な概念:

BCGマトリクスの2つの主要な軸、すなわち「市場成長率」と「相対的市場シェア」について詳しく解説いたします。

1. 市場成長率(縦軸):

  • 定義: 市場成長率は、特定の製品や事業領域が存在する市場の成長の速さを示す指標です。
  • 意味: この指標は、市場の魅力や将来の成長ポテンシャルを示しています。高い市場成長率は、その市場が拡大していることを示し、新しい顧客やビジネスの機会が増えていることを意味します。
  • 戦略的意義: 高い市場成長率を持つ市場には、競争が激しくなる可能性があり、市場のリーダーシップを確立または維持するための投資が必要になることが多いです。

2. 相対的市場シェア(横軸):

  • 定義: 相対的市場シェアは、企業の製品やサービスがその市場で持っているシェアを、最も大きな競合他社のシェアと比較したものです。
  • 意味: 高い相対的市場シェアは、その市場での競争力や優越性を示しています。一般的に、高い市場シェアを持つ企業は、規模の経済やブランドの認知度などの利点を享受できることが多いです。
  • 戦略的意義: 高い市場シェアを持つ製品や事業領域は、コストリーダーシップや価格競争力を持つ可能性が高く、安定した収益を生み出すことができます。一方、低い市場シェアを持つ製品や事業領域は、市場での立ち位置を向上させるための投資や戦略的な取り組みが必要になることが多いです。

これらの2つの軸を組み合わせることで、BCGマトリクスは製品や事業領域の現在の立ち位置と将来のポテンシャルを視覚的に示すことができます。これにより、企業は資源の割り当てや投資の方向性を戦略的に決定するための参考情報を得ることができます。

PPM分析の4カテゴリー(花形,金のなる木,問題児,負け犬)

これらの2つの指標を基に、製品や事業領域を以下の4つのカテゴリに分類します:

問題児花形
負け犬金のなる木

BCGマトリクス(PPM分析)における4つのカテゴリーと、それぞれのカテゴリーに属する事業の取り扱い方、および注意点について説明いたします。

1. 花形(スター、Star)

  • 特徴: 高い市場成長率と高い市場シェアを持つ。
  • 取り扱い方: このカテゴリーの事業は、市場のリーダーシップを維持または強化するための投資が必要です。成長をサポートするためのリソースや資金を確保することが推奨されます。
  • 注意点: 市場の成長が鈍化すると、花形は「金のなる木」に移行する可能性があるため、市場の動向や競合の動きを常に監視することが重要です。

2. 金のなる木(現金牛、Cash Cow)

  • 特徴: 低い市場成長率だが高い市場シェアを持つ。
  • 取り扱い方: このカテゴリーの事業は、安定した収益を生み出すため、大きな投資は必要ありません。収益は他のカテゴリーの事業への投資源として使用することができます。
  • 注意点: 市場シェアを維持するための最小限の投資は続けることが重要です。また、競合に市場シェアを奪われないように注意が必要です。

3. 問題児(Question Mark)

  • 特徴: 高い市場成長率だが低い市場シェアを持つ。
  • 取り扱い方: このカテゴリーの事業は、市場シェアを増やすための投資が必要です。成功すれば「花形」に昇格する可能性がありますが、失敗すると「負け犬」になるリスクもあります。
  • 注意点: 投資のリターンを常に評価し、効果的な投資を行うことが重要です。全ての「問題児」に無闇に投資するのではなく、成功の見込みが高いものに資源を集中させることが推奨されます。

4. 負け犬(Dog)

  • 特徴: 低い市場成長率と低い市場シェアを持つ。
  • 取り扱い方: このカテゴリーの事業は、撤退や再構築の対象となる可能性が高いです。効果的な戦略変更や再投資が難しい場合は、事業の売却や撤退を検討することが推奨されます。
  • 注意点: 感情的な決定を避け、客観的なデータや分析に基づいて意思決定を行うことが重要です。また、撤退する際のコストや影響も考慮する必要があります。

これらのカテゴリーに基づく戦略は、一般的なガイドラインであり、実際の事業環境や組織の状況に応じて適切に調整する必要があります。

PPMの主な特徴や考慮点

  1. 戦略的な視点:PPMは、組織の長期的なビジョンや戦略に基づいてプロジェクトの選択や優先順位を決定します。
  2. リソースの最適化:利用可能なリソース(人的、財務、時間など)を最も効果的に使用するための計画や調整を行います。
  3. リスク管理:ポートフォリオ全体のリスクを評価し、リスクを最小化するための戦略を策定します。
  4. パフォーマンスの監視:ポートフォリオ内の各プロジェクトの進捗や成果を定期的に監視し、必要に応じて調整を行います。
  5. 意思決定のサポート:PPMは、経営層やステークホルダーが情報に基づいて意思決定を行うためのフレームワークを提供します。
  6. 価値の最大化:組織の目標や戦略に最も合致するプロジェクトを選択し、その実行をサポートすることで、投資のROI(投資対効果)を最大化します。

組織が成長し、多くのプロジェクトやプログラムを同時に進行させる必要が出てくると、PPMは非常に重要な役割を果たします。適切なPPMの導入により、組織は限られたリソースを最も価値のある取り組みに集中させることができ、全体としての効果や成果を最大化することができます。

PPM分析における疑問点と回答

Q.負け犬事業において、ニッチャーの立場で最低限の利益が確保できている場合はどうしますか?

「負け犬」事業がニッチな市場で最低限の利益を確保している場合、その事業の取り扱い方は一概に「撤退」や「売却」といった方向性だけに限られるわけではありません。以下は、そのような状況における考慮点や取り組み方の提案です:

1. ニッチ市場の深堀り:

  • そのニッチな市場が持つ特定のニーズや要求に更に焦点を当て、その市場の顧客にとっての価値を高める製品やサービスの改善・開発を検討します。
  • 既存の顧客との関係を強化し、リピートビジネスや口コミによる新規顧客の獲得を促進します。

2. コストの最適化:

  • 利益を最大化するために、運営コストの見直しや効率化を図ります。
  • 不要な支出を削減し、必要最低限のリソースで事業を継続します。

3. ブランドやイメージの強化:

  • ニッチな市場でのリーダーシップや専門性を強調し、ブランドの価値を高める取り組みを行います。

4. 事業の再定義:

  • その事業の強みや資産を活用して、新しい市場やセグメントへの展開を検討します。

5. 継続的な監視:

  • 市場の動向、競合の動き、顧客のニーズの変化などを継続的に監視し、必要に応じて戦略を調整します。

注意点:

  • ニッチ市場は、その規模が小さいため、市場の変動や競合の参入による影響を受けやすいことがあります。そのため、市場の動向を常に注意深く監視することが重要です。
  • また、ニッチ市場での成功が、他の大きな市場での成功を保証するものではありません。市場展開や新製品の開発を検討する際は、リスクを十分に評価することが必要です。

最終的な意思決定は、事業の将来の見込み、組織の全体的な戦略、利用可能なリソースなど、多くの要因を考慮して行う必要があります。

Q.花形市場において、積極的な投資をすべきか検討する上で、どのような点に注意すればよいでしょうか?

「花形(スター、Star)」市場において積極的な投資を検討する際に注意すべき点は以下の通りです:

1. 市場の将来性:

  • 市場の成長が継続するかどうかを評価します。一時的なブームやトレンドに基づく成長である場合、長期的な投資のリターンが期待できない可能性があります。

2. 競合の動向:

  • 競合他社の戦略や動きを密に監視し、自社の競争力を維持・強化するための投資を検討します。
  • 新規参入の可能性や既存競合の戦略変更など、市場の競争環境の変化に備える必要があります。

3. 投資の効果:

  • 投資の目的や期待される効果を明確にし、ROI(投資対効果)を計算して投資の妥当性を評価します。

4. リソースの確保:

  • 必要な資金、人材、技術などのリソースを確保できるかどうかを検討します。リソースが不足している場合、投資の効果が十分に得られない可能性があります。

5. リスクの評価:

  • 投資に伴うリスクを評価し、リスクを最小化するための対策を検討します。市場の変動、技術の進化、規制の変更など、様々な外部要因によるリスクを考慮する必要があります。

6. 市場ニーズの理解:

  • 市場のニーズや顧客の要求を深く理解し、それに応じた投資を行うことが重要です。市場のニーズと合致しない投資は、効果が期待できない可能性があります。

7. タイミング:

  • 投資のタイミングも重要です。市場の成長初期に投資することで、先行者利益を享受することができる可能性があります。

8. 持続性:

  • 積極的な投資を行った後も、その効果を持続させるための継続的な取り組みや投資が必要かどうかを検討します。

最終的には、これらの要因を総合的に考慮し、組織の戦略や目標、リソースの状況などと照らし合わせて、投資の方向性や規模を決定することが重要です。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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