講義ノート

価格設定法の基本|コスト志向、需要志向、競争志向のメリット・デメリットと具体例

価格設定法や政策は、企業の目的や市場環境に応じて適切に選択・組み合わせることが重要です。

コスト志向的価格設定法

この方法は、製品の生産や提供にかかるコストを基に価格を設定するものです。具体的には、直接コストや間接コストを合計し、所望の利益を上乗せして価格を決定します。この方法は計算がシンプルで、利益を確保するための価格が明確になります。

コスト志向的価格設定法のメリット

  1. 明確な計算基準: 製品のコストを基に価格を設定するため、計算がシンプルで明確です。
  2. 利益の確保: 製品のコストに所望の利益を上乗せすることで、一定の利益を確保することができます。
  3. 価格の安定性: コストが安定している場合、価格の変動が少なくなり、消費者に安定した価格を提供できます。

コスト志向的価格設定法のデメリット

  1. 市場の変動に対応しにくい: 市場の需要や競争状況に応じて価格を柔軟に変動させることが難しくなることがあります。
  2. 過剰なコストの反映: 生産効率が低い場合やコストが過剰にかかっている場合、それが価格に反映されるため、競争力が低下する可能性があります。
  3. 消費者の価値認識との乖離: コストベースでの価格設定は、消費者が製品に対して感じる価値と乖離することがある。

コスト志向的価格設定法の具体例

  1. 製造業: ある工場が家具を製造しているとします。この家具の材料費が10,000円、製造費が5,000円、その他の固定費が分散して3,000円かかるとしたら、合計コストは18,000円となります。ここに10%の利益を上乗せすると、販売価格は19,800円となります。
  2. レストラン: あるレストランが特定の料理を提供しているとします。材料費が500円、調理費や人件費が300円、店舗の運営費が200円としたら、合計コストは1,000円となります。ここに20%の利益を上乗せすると、料理の価格は1,200円となります。

需要志向的価格設定法

需要と供給のバランスや消費者の価値認識を基に価格を設定する方法です。消費者が製品に対して支払う意思がある最大価格を調査し、それを基に価格を決定します。市場のニーズや価値を重視する方法です。

需要志向的価格設定法のメリット

  1. 市場ニーズの反映: 消費者の価値認識や支払意向を基に価格を設定するため、市場のニーズを直接反映することができます。
  2. 価格の柔軟性: 市場の需要や競争状況に応じて価格を柔軟に変動させることができます。
  3. 高い利益率: 消費者が製品に対して感じる価値が高い場合、それに応じて高い価格を設定することができ、利益率を高めることが可能です。

需要志向的価格設定法のデメリット

  1. 価格設定の難易度: 消費者の価値認識や支払意向を正確に把握するための調査や分析が必要となり、価格設定の難易度が高まります。
  2. 価格の変動リスク: 市場の需要が変動すると、価格も頻繁に変動する可能性があり、消費者の混乱や信頼の低下を招くリスクがあります。
  3. 競合との価格競争: 他の競合企業も同様の方法で価格を設定する場合、価格競争が激化する可能性があります。

需要志向的価格設定法の具体例

  1. 高級ブランド製品: ルイ・ヴィトンやシャネルなどの高級ブランドは、消費者がブランドに対して感じる価値やブランドイメージを基に価格を設定しています。これにより、製品のコストよりもはるかに高い価格で商品を販売することができます。
  2. 新技術製品: 新しい技術や機能を持つスマートフォンや家電製品は、その独自性や機能の価値を消費者が高く評価する場合、高い価格で販売されることがあります。

競争志向的価格設定法

競合他社の価格戦略を参考に、自社の製品価格を設定する方法です。市場の平均価格やリーダー企業の価格を基に、自社の位置付けや差別化を考慮して価格を決めます。

競争志向的価格設定法のメリット

  1. 市場適応: 競合他社の価格戦略を参考にするため、市場の平均価格や競争状況に迅速に適応することができます。
  2. リスク低減: 他社との価格差が少なくなるため、価格競争による大きな損失のリスクを低減することができます。
  3. 消費者の信頼獲得: 他社と同等の価格帯で製品を提供することで、消費者からの信頼を獲得しやすくなります。

競争志向的価格設定法のデメリット

  1. 利益率の低下: 競合との価格競争に巻き込まれ、価格を下げざるを得なくなることで、利益率が低下する可能性があります。
  2. 差別化の難しさ: 価格を競合と同じレベルに設定することで、製品の差別化を図ることが難しくなることがあります。
  3. 価格戦争のリスク: 競合との価格競争が激化すると、価格戦争に突入し、全体の市場価値が低下するリスクがあります。

競争志向的価格設定法の具体例

  1. スーパーマーケット: 同じ地域に複数のスーパーマーケットが存在する場合、各店舗は競合店の価格を参考にして、商品の価格を設定することが一般的です。特に、主要な商品や広告商品においては、競合との価格差を少なくすることで、消費者を引きつける戦略を取ることが多いです。
  2. ガソリンスタンド: 道路沿いに複数のガソリンスタンドが並んでいる場合、各スタンドは隣接する競合の価格を参考にして、ガソリンの価格を設定します。これにより、ドライバーからの信頼を獲得し、多くの顧客を引きつけることを目指します。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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