講義ノート

EDLP戦略(Every Day Low Price):メリットとデメリットを解説

EDLPとは?

EDLPの定義

EDLPは、Every Day Low Priceの略で、「毎日安い価格」を指す言葉です。

一般的には、商品やサービスを一定の低価格で常に提供するという販売戦略のことを指します。特に小売業界においては、消費者の需要変動や競合との価格競争を背景に、価格が頻繁に変更されることが一般的ですが、EDLPはそのような変動ではなく、一貫して同一の商品を安定的に低価格で提供し続ける戦略のことを指します。

逆に、特売価格などを設定する戦略をHILOといいます。

EDLPの戦略とは?

EDLPの戦略を実行するためには、企業にとって大きな挑戦となる要素もあります。

主な挑戦の一つは、一貫した低価格で商品を提供することで、利益率が薄くなる可能性があるという点です。そのため、この戦略を取り入れる企業は、大量生産や大量仕入れによるコスト削減を図り、それによって低価格を実現していくことが求められます。

さらに、品質の維持や商品の補充についても客観的な目標を設定し、それらを維持し続けることが重要となります。

EDLPを取り入れる企業の特徴

EDLPを採用する企業の多くは大型チェーン店であり、彼らは大規模なネットワークと供給元との強力な関係を活用して、大量仕入れによるコスト削減を実現し、一貫した低価格を維持することができます。

また、消費者に対して一貫した価格を提供することで、消費者の信頼を得ることができ、リピーターを増やす一方で、価格戦争から一定の距離を保つことができるのです。

利益率の低下は心配されますが、その分を大量販売により補うという戦略を取ることが多いです。その結果、EDLP戦略は長期的なビジネス計画に適していると言えるでしょう。

EDLP戦略のメリット

EDLP戦略には、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

顧客ロイヤリティの向上

EDLP戦略の最大のメリットは、顧客ロイヤリティの向上にあります。

顧客は一定の品質を保ったままで低価格を維持している企業を信頼します。
その結果、企業は顧客が継続的に商品を購入するリピーターを獲得し、ロングテールの販売につなげることができます。

加えて、顧客は価格の安定性により、購買を繰り返すことで自身の生活コストを計画的に管理できると感じるでしょう。

さらに、これは顧客満足度の向上にもつながり、口コミによる新規顧客の獲得を促進します。

在庫管理の効率化

次に、在庫管理の効率化もEDLP戦略の大きなメリットの一つです。

一定の価格設定を行っていると、需要の予測が比較的容易になります。その結果、必要以上の在庫を抱えることなく、最適な在庫量を保つことが可能になります。

また、大量に仕入れることで仕入れコストを低減することができ、これもまた利益向上に寄与します。

さらに、売り切れとなることで顧客を失うリスクも軽減できるというメリットもあります。

長期的な利益の確保

最後に、EDLP戦略は長期的な利益の確保に寄与します。

安定した価格設定は、顧客の長期的なロイヤリティを獲得し、固定的な売上を期待することができます。

また、企業全体の効率性を高めることで経営の安定性も得ることができます。その結果、安定した利益とともに企業価値の向上を実現することが可能となります。

さらに、安定した利益は事業の拡大や新たな投資に対する自由度を増すことにもつながります。

これらもまた、長期的な視点で利益確保に寄与する要素と言えるでしょう。

EDLP戦略のデメリット

EDLP戦略には、いくつかのデメリットも存在します。

価格競争のエスカレーション

EDLP戦略には、価格競争のエスカレーションという大きな問題が付きまといます。

一般的に、この戦略を取り入れた企業は他社を圧倒するため、常に価格を抑える必要があります。結果、価格を下げ続ける一方で、質の保証が難しくなる可能性が高まります。

更に、低価格競争がエスカレートすると、企業全体の利益率が低下し、長期にわたって業績が悪化する可能性も出てきます。

そのため、企業は冷静に市場動向を観察し、EDLP戦略を適切に取り入れることが求められます。

高品質なイメージの損失

また、もう一つの大きなデメリットとして、高品質なイメージの損失が挙げられます。

低価格商品は利益率が低いため、その分品質に投資できる余裕がなくなる可能性があります。その結果、品質が悪化し、消費者の中に「低価格=低品質」という誤解が生まれる恐れがあります。

これにより、企業のブランドイメージが長期的に低下し、信頼性が損なわれる可能性があります。

短期的な売上減少のリスク

さらに、EDLP戦略は初期段階で販売価格を大幅に下げるため、短期的に売上が減少するリスクがあります。

価格を下げることで、確かに消費者の買いやすさは向上しますが、それと引き換えに各商品ごとの売上は減少することになります。

また、価格を下げることで他社の反応を引き起こし、同じく価格を下げる結果、相対的な魅力が薄れる可能性もあります。そのため、適度な価格設定と、それに見合った品質を提供しなければなりません。

EDLPの成功事例

多くの消費者にとって、価格は商品を選ぶ最も重要な要素の1つで、低価格が長期的な顧客ロイヤルティを生むことが認識されています。この記事では、EDLPを成功させているWalmart、Costco、Amazonなど、主要企業の事例を見ていきましょう。

WalmartのEDLP戦略

世界最大のリテール企業であるWalmartは、その地位を、EDLP戦略の採用によって獲得しました。

この戦略は商品の価格を一定に保つことで、価格変動による顧客の混乱を最小限に抑え、安定した価格体系を提供します。

Walmartは、売上の増加と高い顧客満足度を実現するため、低価格だけでなく品質も重視します。そして、顧客に対して最良の製品を最も低い価格で提供することを目指しています。

そのため、企業内部ではコスト削減にも力を入れており、高い競争力を維持しています。

コストコのEDLP戦略

メンバーシップ制の大型小売業者であるコストコは、高品質な商品を低価格で提供することで知られています。

コストコのビジネスモデルは、顧客が年間会員費を支払って商品を購入できるようにすることであり、これによって安定した収益源を確保しています。その為、他の小売業と比べて低価格で商品を提供することが可能です。

また、商品選択の分野でも、多くの一般的なアイテムを抑えつつ、一部の商品では高級ブランドの採用も行っており、顧客の高い満足度を維持しています。

AmazonのEDLP戦略

オンラインリテールのリーダーであるAmazonは、低価格、便利さ、広範な商品選択を通じて、EDLP戦略を採用しています。

Amazonは上手くプレミアム会員制度を利用し、年間会員費を支払うことで早期配送や特別割引などの利点を得ることで、定期的な購買行動を促しています。

さらに、多岐にわたる商品ラインナップと低価格により、顧客満足度の向上とブランドロイヤルティの獲得に成功しています。これらの戦略は、Amazonを電子商取引の世界でのリーダーに押し上げ、さらなる成長を後押ししています。

EDLPの失敗事例

ここでは、特にEDLP戦略が裏目に出てしまった事例として、大手小売企業であるJCpenney、Kmart、BestBuyの失敗例を探っていきます。

JCpenneyのEDLP戦略失敗

アメリカの大手百貨店JCpenneyは、2011年に新CEOとして就任したロン・ジョンソンのもとでEDLP戦略に大きく舵を切りました。

ジョンソンはApple Storeの創設者であり、その手腕に期待を集めるとともに、彼の推進したEDLP戦略は1年後に大損失を招くこととなります。

主に二つの失敗が考えられます。

一つ目は、JCpenneyの顧客層が価格に敏感でセール商品の購入を楽しみにしていたにも関わらず、EDLP戦略による値下げはそれほど明確ではありませんでした。結果として、顧客が認知できない価格情報の変化により一時的な混乱が起き、売り上げ機会を大きく逃がしました。

二つ目は、買い物体験を改善しようというジョンソンの試みがJCpenneyの顧客層に合わなかったという部分です。顧客層への理解度が低かったが故の失敗でしょう。

KmartのEDLP戦略失敗

またの一例として、大手ディスカウントチェーンのKmartもEDLP戦略に失敗した事例があります。

1990年代初頭、同社は当時スーパーマーケットでシェアを伸ばしていたウォルマートを参考に、自社の商品も低価格を実現するEDLP戦略を採用しました。しかし、Kmartの商品群が特定のブランドではなく広範な品揃えからなるため、消費者は同等の商品を他店で比較して購入するという行動を取りました。

結果として、Kmartの価格がどれだけ安く設定されていても他店と比較され、ロイヤルな顧客が作れずに同社は大きな売り上げを失いました。

BestBuyのEDLP戦略失敗

大手電機販売店のBestBuyもまた、EDLPによる失敗事例として語られます。

2012年、同社は「Price Match Guarantee」を導入し、他社が提供する同等の商品より自社の料金が高い場合は返金するというEDLP戦略を展開しました。しかし、これはインターネットで比較購入が容易な電化製品業界では大きなリスクを伴い、多くの消費者がネットショップで価格比較を行って自社の料金が他店より高いと判断した場合、その差額を証明すればBestBuyが返金するという状況に陥りました。

これにより、BestBuyの利益は大きく損なわれ、その戦略は失敗に終わりました。

EDLP実施時の注意点

競合他社との価格差額

競合他社との価格差を把握することは、EDLP実施において重要な視点と言えます。

なぜなら、その差額が消費者の購買行動に大いに影響を及ぼすからです。

同等の商品を取り扱う競合他社の価格を厳密に調査し、自社商品の適切な価格設定を行う必要があります。

ただし、単純に低価格競争に走ることは、長期的なビジネスに影響を与え、自社のブランド価値を毀損する可能性もあります。そのため、価格差には十分な配慮を持つ事が肝心となります。

商品の品質維持

次に、商品の品質維持も極めて重要な要素です。
安価な価格を維持するために、商品の品質が犠牲になってはならないのです。

たとえ商品が安くても、その品質が低ければ、消費者からの信頼を失い、結果的には購買量も減少してしまうでしょう。

商品の品質を確保しながら、効率的な生産や調達方法を工夫し、経済的な価格設定を実現することで、持続可能なEDLP運営を行うことができます。

価格設定の適切性

最後に、価格設定の適切性も重大な要素です。

消費者が感じる商品の価値と、設定価格が一致していなければ、商品の販売はうまくいかないでしょう。

商品の価値を正しく評価し、それに対し適切な価格を設定することで、消費者に安心感を提供しながら、売上を増やすことが可能となります。

ここでも、競合他社の価格情報、商品のコスト、消費者の購買傾向等の複数の要素を考慮した価格設定が求められます。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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