講義ノート

戦略としての価格設定|心理、製品ミックス、サブスク、プロモーション

戦略的な価格設定の手法をまとめました。価格設定の基本については、以下の別記事をご参照ください。

心理的価格政策

消費者の心理や認識を利用して価格を設定する方法です。

端数価格

端数価格は、商品の価格を丸められた整数よりもわずかに低く設定する戦略です。例えば、¥1,000ではなく¥999や¥980といった価格設定がこれに該当します。このような価格設定は、消費者に少しでも安く感じさせることを目的としています。心理的には、左から読む際の最初の数字が小さいと、全体としての価格も低く感じられるという効果があります。

慣習価格

慣習価格は、消費者が一般的に受け入れられていると感じる価格のことを指します。特定の商品やサービスに対して、消費者が長い間に形成してきた価格のイメージや期待に基づいています。この価格を上回ると、消費者は購入をためらう可能性があります。

名声価格

名声価格は、高価格を設定することで製品の高品質やブランドの価値を強調する戦略です。この価格設定は、特に高級ブランドやプレミアム商品に見られます。高い価格は、製品の独占性や特別感を強調し、消費者の購買意欲を刺激することが目的です。

プライスライニング

プライスライニングは、商品のラインナップをいくつかの価格帯に分け、それぞれの価格帯で商品を提供する戦略です。これにより、消費者は自分の予算やニーズに合わせて商品を選ぶことができます。また、企業側としては、異なる価格帯の商品を効果的に展開することで、幅広い消費者層をターゲットにすることができます。

製品ミックス価格設定戦略

複数の製品を組み合わせて価格を設定する方法です。製品の組み合わせやバンドル販売を通じて、全体の売上や利益を最大化することを目指します。

キャプティブ価格

キャプティブ価格は、主製品とそれに関連する補助製品や消耗品を販売する際の価格設定戦略です。主製品は比較的低価格で提供され、消耗品や補助製品は高価格で販売されることが一般的です。例としては、プリンターとインクカートリッジの関係が挙げられます。プリンター本体は安価で提供される一方、インクカートリッジは繰り返し購入が必要で、高価格で販売されることが多いです。

価格バンドリング

価格バンドリングは、複数の製品を一つのセットとしてまとめて販売する価格設定戦略です。バンドルされた製品の合計価格は、個別に購入する場合よりも割安に設定されることが一般的です。この戦略は、消費者に複数の製品を一度に購入させることを目的としています。例としては、ソフトウェアのスイート製品や、ホテルの宿泊と食事のセットプランなどが挙げられます。

製品ライン価格設定

製品ライン価格設定は、同じブランドやカテゴリー内の異なる製品を、異なる価格帯で提供する戦略です。これにより、消費者は自分の予算やニーズに合わせて製品を選択することができます。例としては、化粧品ブランドが、エントリーモデルからプレミアムモデルまで、異なる価格帯の製品ラインを展開するケースが挙げられます。

サブスクリプション価格政策

サブスクリプション価格は、消費者が一定の期間ごと(例: 月額、年額)に定額を支払うことで、製品やサービスを継続的に利用できる価格設定モデルを指します。このモデルは、近年、多くの業界やビジネスモデルで採用されています。

主な特徴

  1. 継続的な収益: 企業は定期的な収入を確保できるため、収益の安定性や予測性が向上します。
  2. 顧客ロイヤルティの向上: 顧客は継続的にサービスを利用することで、ブランドやサービスへのロイヤルティを深めることができます。
  3. 初期コストの軽減: 一度に大きな金額を支払う代わりに、小額の定期支払いを選ぶことで、消費者の購入の敷居が低くなります。

適用例:

  • オンラインストリーミングサービス(Netflix, Spotifyなど)
  • ソフトウェアやクラウドサービス(Adobe Creative Cloud, Microsoft 365など)
  • 定期的な商品配送サービス(食材宅配、雑誌購読など)

課題や注意点

  1. 価値の継続的な提供: 顧客が継続的に料金を支払うため、サービスの価値を継続的に提供し続ける必要があります。
  2. 解約率の管理: 高い解約率(チャーン率)は、ビジネスの持続性や収益性に影響を与えるため、顧客満足度の向上や解約の要因分析が重要です。

販売促進的価格政策

販売促進的価格政策は、消費者の購買心理や行動を考慮して、効果的な価格設定を行うための戦略です。

ロスリーダー政策(おとり価格政策)

ロスリーダー政策は、商品を原価以下や非常に低い価格で販売する戦略を指します。この政策の目的は、低価格の商品を購入するために消費者を店舗やサイトに引きつけ、他の高利益商品の購入を促進することです。例えば、スーパーマーケットでの特売日のような場面で見られます。この戦略は短期的な販売促進を目的としており、長期的な利益を追求するものではありません。

ハイ・ロープライシング

ハイ・ロープライシングは、通常時は商品を高価格で販売し、期間限定のセールやプロモーション時に大幅に値下げする価格戦略を指します。この戦略の目的は、セールやプロモーションを通じて消費者の購買意欲を刺激し、高価格時の購入を通じて利益を確保することです。消費者は「お得感」を追求する傾向があり、この戦略はその心理を利用しています。

EDLP政策 (Every Day Low Pricing)

EDLPは、日常的に低価格を維持する価格戦略を指します。セールやプロモーションを頻繁に行うのではなく、一貫して低価格を提供することで、消費者に安定した価格を約束します。この戦略の目的は、消費者の信頼を獲得し、継続的な購入を促進することです。大手ディスカウントストアなどがこの戦略を採用しています。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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