講義ノート

ブランド戦略の基本;概念、要素、エクイティ、戦略とその事例まで

ブランドに関する概念

1. ナショナルブランド(National Brand)

ナショナルブランドは、全国的に認知されているブランドです。これらは大規模な広告キャンペーンや流通ネットワークを通じて、広範囲の市場で販売されます。例えば、コカ・コーラやトヨタなどがこれに該当します。

2. プライベートブランド(Private Brand)

プライベートブランドは、特定の小売業者やチェーン店によって製造・販売されるブランドです。これらはしばしば「ストアブランド」や「自社ブランド」とも呼ばれ、独自の品質や価格で競合他社と差別化を図ります。例えば、イオンのトップバリュやセブン-イレブンのセブンプレミアムなどがあります。

3. ファミリーブランド(Family Brand)

ファミリーブランドは、複数の製品に共通のブランド名を使用する戦略です。これにより、既存のブランドの好感度や信頼性を新製品に移行させることができます。例えば、ソニーの「ブラビア」やホンダの「アコード」などがこれに当たります。

4. ダブルブランド(Dual Branding)

ダブルブランドは、二つのブランドが共同で製品やサービスを提供する戦略です。これにより、両ブランドの強みを生かし、より広い顧客層にアピールすることができます。例えば、コーヒーショップと書店の共同店舗などがこれに該当します。

5. ブランドプラスグレード(Brand Plus Grade)

この概念は、特定のブランドにさらにグレードやランクを設けることを指します。これにより、同じブランド内で異なる価格帯や品質レベルの製品を提供することが可能になります。例えば、トヨタの「レクサス」はトヨタブランドの高級車ラインとして位置づけられています。

6. 個別ブランド(Individual Brand)

個別ブランドは、各製品に独自のブランド名を付ける戦略です。これにより、各製品が独立したアイデンティティを持ち、特定の市場セグメントに特化することができます。例えば、P&Gのタイドやアリエールなどがこれに当たります。

7. 分割ファミリーブランド(Segmented Family Brand)

分割ファミリーブランドは、ファミリーブランドの一種で、特定の製品ラインや市場セグメントに特化したサブブランドを設ける戦略です。これにより、異なる顧客ニーズに対応しつつ、全体のブランドイメージを維持することができます。例えば、日産の「インフィニティ」は高級車セグメントに特化したサブブランドです。

ブランド要素

ブランド要素とは、ブランドのアイデンティティを形成し、消費者にブランドを認識させ、覚えてもらうためのさまざまな特徴や属性のことです。これらの要素は、ブランドの独自性、魅力、価値を伝え、消費者との関係を築く上で重要な役割を果たします。主なブランド要素には以下のようなものがあります。

1. ブランド名(Brand Name)

  • ブランドを識別する最も基本的な要素。
  • 記憶に残りやすく、発音しやすい名前が望ましい。

  • 視覚的なシンボルやマーク。
  • ブランドのイメージや価値観を象徴的に表現する。

3. スローガン(Slogan)

  • ブランドのメッセージや姿勢を簡潔に表現するキャッチフレーズ。
  • 繰り返し使われることで、ブランドの認知度を高める。

4. キャラクター(Character)

  • ブランドを象徴するキャラクターやマスコット。
  • 親しみやすさや記憶に残りやすさを提供する。

5. パッケージデザイン(Packaging Design)

  • 製品の包装やデザイン。
  • 視覚的魅力を提供し、棚での目立ちやすさを高める。

6. ジングル(Jingle)

  • ブランドに関連する音楽やメロディ。
  • 聴覚を通じてブランドを記憶させる。

7. トーン&マナー(Tone & Manner)

  • ブランドがコミュニケーションを行う際の言葉遣いや態度。
  • ブランドの性格や価値観を反映する。

ブランド・エクイティ

ブランド・エクイティ(Brand Equity)は、ブランドが持つ付加価値のことで、消費者の認識や感情、経験に基づいて形成されます。ブランド・エクイティが高いと、消費者はそのブランドの製品やサービスに対してより高い価値を認識し、忠誠心を持ちやすくなります。ブランド・エクイティは以下の主要な要素から成り立っています。

1. ブランド認知(Brand Awareness)

  • ブランドがどれだけ広く認識されているかを示します。
  • 高いブランド認知は、購入決定の際にブランドが選択肢として考慮される可能性を高めます。

2. ブランドの関連性(Brand Relevance)

  • ブランドが消費者のニーズや欲求にどれだけ適合しているかを示します。
  • 関連性が高いブランドは、消費者にとってより魅力的で価値あるものとなります。

3. ブランドの知覚された品質(Perceived Quality)

  • 消費者がブランドの製品やサービスの品質をどのように評価しているかを示します。
  • 高い知覚された品質は、価格プレミアムや顧客の忠誠心を生み出すことができます。

4. ブランドの関連付け(Brand Associations)

  • 消費者がブランドに対して持つ肯定的なイメージや感情。
  • 強いブランド関連付けは、ブランドの差別化と顧客の忠誠心を促進します。

5. ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty)

  • 消費者が繰り返し同じブランドを選択する傾向。
  • ロイヤルティの高い顧客は、新製品の採用や口コミによる推奨において重要な役割を果たします。

ブランド・エクイティの強化は、長期的なマーケティング戦略と一貫したブランド管理を通じて達成されます。強いブランド・エクイティは、市場での競争優位性、価格設定の柔軟性、顧客基盤の拡大など、ビジネスに多大な利益をもたらすことができます。

ブランド戦略

ブランド戦略における「ライン拡張」、「ブランド拡張」、「マルチブランド」、「新ブランド」の概念について説明します。これらは、企業が市場での存在感を高め、顧客基盤を拡大するために用いる異なる戦略です。

1. ライン拡張(Line Extension)

ライン拡張は、既存のブランド名の下で新しい製品バリエーションやフレーバー、サイズ、形式などを市場に導入する戦略です。この戦略の目的は、既存のブランドの強みを活用して、製品カテゴリー内での市場シェアを拡大することにあります。例えば、ある人気の飲料ブランドが新しいフレーバーや低カロリーバージョンを市場に投入するのはライン拡張の一例です。

2. ブランド拡張(Brand Extension)

ブランド拡張は、既存のブランド名を使用して、全く新しい製品カテゴリーに進出する戦略です。これにより、ブランドの認知度と信頼性を新しい市場で活用し、製品の受け入れを促進します。例えば、元々はシューズメーカーであったブランドがスポーツウェアやアクセサリーを製造するようになるのはブランド拡張の一例です。

3. マルチブランド(Multi-Branding)

マルチブランド戦略では、企業は同じ製品カテゴリー内で複数のブランドを展開します。これにより、異なる市場セグメントや顧客ニーズに対応し、競合他社との差別化を図ります。例えば、自動車メーカーが高級車ブランドと経済的な車ブランドの両方を持つのはマルチブランド戦略の一例です。

4. 新ブランド(New Brand)

新ブランド戦略は、企業が新しい製品やサービスを市場に導入する際に、全く新しいブランド名を作成するアプローチです。これは特に、既存のブランドが新しい市場セグメントや製品カテゴリーに適合しない場合、または新しいブランドイメージを構築したい場合に採用されます。例えば、既存の企業がテクノロジー分野に新規参入する際に、新しいブランド名を立ち上げるのは新ブランド戦略の一例です。

これらの戦略は、企業の目的、市場の状況、競合環境、顧客のニーズに基づいて選択されます。適切な戦略を採用することで、企業は市場での競争力を高め、成長を促進することができます。

ブランド戦略の例

メルセデス・ベンツとモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は、それぞれ自動車業界と高級品業界で高いブランド価値を持つ企業です。彼らのブランド戦略における「ライン拡張」、「ブランド拡張」、「マルチブランド」、「新ブランド」の具体例を見ていきましょう。

メルセデス・ベンツ

ライン拡張

  • メルセデス・ベンツは、様々なモデルの車を提供しています。例えば、Sクラス、Eクラス、Cクラスなど、異なるサイズや性能を持つ車種を展開しています。これらは同じブランドの下で異なるニーズに応えるためのライン拡張です。

ブランド拡張

  • メルセデス・ベンツは、自動車製造に加えて、自動車関連のアクセサリーやライフスタイル商品(例えば、服飾品や香水)を販売しています。これらは自動車以外のカテゴリーへのブランド拡張を示しています。

マルチブランド

  • メルセデス・ベンツ自体は、特定のブランドに集中していますが、親会社であるダイムラーAGは、スマートやメイバッハなど、他のブランドも所有しています。

新ブランド

  • メルセデス・ベンツは、電気自動車市場に参入する際に「EQ」という新しいサブブランドを立ち上げました。これは新しい市場セグメントに対応するための新ブランド戦略です。

モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)

ライン拡張

  • ルイ・ヴィトンは、元々トランクやバッグで知られていましたが、財布、時計、ジュエリーなどの製品ラインを拡張しています。

ブランド拡張

  • LVMHは、高級ファッションブランドから始まり、時計、ジュエリー、香水、化粧品などの異なるカテゴリーにブランドを拡張しています。

マルチブランド

  • LVMHは、ルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディ、ケンゾーなど、多数の異なる高級ブランドを所有しています。これは明確なマルチブランド戦略の例です。

新ブランド

  • LVMHは新しいブランドを立ち上げることもあります。例えば、リアーナと共同で立ち上げたファッションブランド「Fenty」は、新しい市場セグメントにアプローチするための新ブランドです。

これらの例は、メルセデス・ベンツとLVMHがどのように異なるブランド戦略を用いて市場での地位を確立し、拡大しているかを示しています。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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