講義ノート

グループダイナミクス;集団の凝集性、集団浅慮(グループシンク)

グループダイナミクスとは

グループダイナミクスは、人々が集団内でどのように相互作用し、影響し合うかを研究する心理学の分野です。

これには、集団内のコミュニケーションのパターン、リーダーシップのスタイル、グループの意思決定プロセス、および集団内での個人の行動などが含まれます。以下は、グループダイナミクスの主要な要素と概念です:

  1. 役割とステータス:グループ内の各メンバーは特定の役割を持ち、これらの役割はステータスや権威に影響を与えます。
  2. 規範と規則:グループは特定の規範(行動のルールや基準)を持ち、これによってメンバーの行動が形成されます。
  3. 凝集性:グループメンバー間の結束力。高い凝集性は一般的にポジティブな結果をもたらしますが、過度になると「グループシンク」のような問題を引き起こす可能性があります。
  4. 意思決定:グループは多様な方法で意思決定を行います。これには合意形成、多数決、専門家の意見に依存するなどがあります。
  5. リーダーシップ:グループには通常、リーダーまたはリーダーシップチームが存在し、方向性、構造、動機付けを提供します。
  6. コミュニケーション:グループ内の効果的なコミュニケーションは、成功に不可欠です。これには、オープンな対話、リスニングのスキル、フィードバックの提供と受け入れが含まれます。
  7. コンフリクトと解決策:コンフリクトは避けられないものですが、適切に管理されると、新しいアイデアや改善につながることがあります。
  8. グループ開発の段階:多くの理論では、グループは形成、嵐(コンフリクトの段階)、規範化、パフォーマンス、解散の段階を経て発展します。

集団の凝集性

集団の凝集性は、グループメンバー間の結束力や団結感を指します。この凝集性が高いグループでは、メンバーは互いに強く連携し、共通の目標に向かって努力します。凝集性の高いグループは、以下の特徴を持ちます:

  1. 高い相互作用:メンバー間のコミュニケーションが活発です。
  2. 共通の目標:グループ全体が一つの目標に集中しています。
  3. 相互依存:メンバーはお互いに依存し、協力しています。
  4. 個人の貢献の重視:個々のメンバーの貢献が認められ、評価されます。

集団浅慮(グループシンク)

一方で、集団浅慮(グループシンク)は、凝集性が過度に高いことで発生するネガティブな現象です。これは、グループ内の調和と一致を維持するために、異なる意見や批判的な思考が抑制される状況を指します。グループシンクの特徴は以下の通りです:

  1. 異質な意見の排除:グループ内での合意を優先し、異なる意見が封じられます。
  2. 過度の自信:グループの意思決定に対する過度の自信が生じ、リスクの見落としが起こります。
  3. 圧力の存在:異論を持つメンバーに対して、グループからの圧力がかかります。
  4. 意思決定の質の低下:批判的な思考が欠如し、リスクの高い意思決定が行われることがあります。

集団浅慮(グループシンク)の回避

集団浅慮(グループシンク)を回避するためには、環境整備とリーダーのスキルの両面から対策を講じることが重要です。以下にそれぞれの観点からの対策を挙げます。

環境整備

  1. オープンなコミュニケーションを促進:異なる意見が尊重され、自由に表現される環境を作ります。これには、意見の多様性を奨励する文化の構築が含まれます。
  2. 異質な意見の歓迎:グループ内に意見の多様性を持ち込むために、様々な背景や視点を持つメンバーを含めることが重要です。
  3. 非公式な会議の活用:公式な会議ではなく、カジュアルな設定での討論を促進することで、より自由な意見交換が行えます。
  4. 小グループでの討議:大きなグループを小さな単位に分けて議論を行うことで、個々の声がより聞きやすくなります。
  5. 匿名のフィードバックシステムの導入:匿名で意見を提供するシステムを設けることで、オープンかつ正直なフィードバックが促されます。

リーダーのスキル

  1. 意見の多様性を奨励:リーダーは意見の多様性を積極的に奨励し、異質な意見に耳を傾けるべきです。
  2. 自らの意見を最後に述べる:リーダーが先に意見を述べると、他のメンバーがその意見に同調しがちです。リーダーは自身の意見を最後に留めることで、他のメンバーが自由に意見を述べやすくなります。
  3. 批判的評価者の役割の設定:グループ内に、意図的に決定や提案を批判する役割を設けることで、一方的な意見の流れを防ぎます。
  4. 意思決定前のリフレクション:重要な意思決定の前には、グループ全体でリフレクションの時間を設け、メンバーが自身の考えを再評価する機会を持つことが大切です。
  5. 外部の意見の取り入れ:外部の専門家や独立したアドバイザーの意見を聞くことで、グループ内の思考の偏りを防ぎます。

これらの対策は、集団浅慮を回避し、より健全で効果的なグループダイナミクスを促進するために有効です。リーダーが積極的な役割を果たし、メンバーが多様な視点を持つ環境を作ることが重要です。

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猿樂 昌之

猿樂 昌之

猿樂事務所(同 つむぐ人たち)の代表です。金融機関向け研修での補足情報や経営の知見を発信しております。よろしければSNSをフォローください。

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